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宿坊ビジネスの可能性:寺院で提供する文化体験で収益と地域貢献を両立

  • inquiry5713
  • 12月5日
  • 読了時間: 6分

歴史あるお寺に泊まるというユニークな宿泊形態が、近年「宿坊」「寺泊(寺院民泊)」ビジネスとして脚光を浴びています。寺院という非日常的な空間での滞在は、日本文化の深みを味わいたい旅行者にとって大変魅力的であり、ここでしか得られない特別な体験を提供します。一方で少子高齢化や檀家減少に伴い経営難に陥る寺院も増えており、宿泊事業による収益確保は寺院維持と地域活性化の新たな解決策として期待されています。旅結株式会社も「寺泊(テラステイ)」事業として全国の寺院と連携し、文化体験と宿泊を融合させたモデルづくりに挑戦しています。ここでは寺院宿泊ビジネスの現状と可能性、成功のポイントについて解説します。

寺院民泊が求められる背景

古くからお寺の宿泊施設「宿坊」は巡礼者や信者を受け入れる場として存在してきました。しかし現代では、そうした伝統的宿坊とは別に、寺院を観光客向けに開放する**「寺院×民泊」という新たな試みが活発化しています。背景には、日本各地で進む寺院の過疎化問題があります。後継者不在や檀家離れにより管理されなくなった廃寺・空き寺が地方を中心に増加し、住職のいない無住寺院は推定1万7千寺**にも上ります。こうした寺院は、このままでは文化的価値ある建造物が荒廃してしまう上、地域コミュニティの核を失うことにもつながります。

そこで注目されるのが、寺院を宿泊施設として再生する取り組みです。2018年の民泊新法施行により、旅館業の許可がなくとも届出だけで住宅宿泊事業(民泊)を営むことが可能となり、お寺を宿泊サービスに活用しやすい環境が整いました。従来の宗教施設という枠を超え、お寺を一般旅行者にも開かれた「滞在型観光資源」として活用することで、寺院の維持・収益確保伝統文化の発信という二つの課題を同時に解決できる可能性があります。事実、滋賀県の三井寺(園城寺)では境内の僧坊をフルリノベーションし、座禅・写経などの体験付き寺泊施設として提供する事例も登場しました。このように行政や企業と連携した寺院活用モデルが各地で生まれ始めており、社会課題の解決と観光振興を両立する取り組みとして期待が高まっています。

非日常体験が生む付加価値

近年の旅行者は単に観光地を巡るだけでなく、その土地ならではの文化・歴史に触れる非日常体験を求める傾向が強まっています。寺院宿泊はまさにそうしたニーズに応えるコンテンツを提供できます。歴史的価値のある伽藍の中で寝起きし、静寂に包まれた空間で心安らぐ——それ自体が唯一無二の体験です。さらに多くの寺院型宿泊施設では、宿坊ならではの以下のような体験プログラムを用意しています:

  • 座禅・写経体験:早朝の座禅会や写経など、僧侶の指導のもと仏教修行の一端を体験できる(精神集中とリラクゼーション効果)。

  • 朝のお勤め参加:読経や法話に参加し、日常では味わえない厳かな時間を過ごせる。

  • 精進料理:肉や魚を使わない伝統的な精進料理を味わい、日本の食文化や精神性に触れられる。

  • 僧侶・地域住民との交流:希望者には僧侶との座談や地域行事への参加機会を提供し、人と人、人と土地の新たな絆を育む。

特に座禅や写経、精進料理といった体験メニューは海外からの旅行者に大人気のコンテンツであり、「ここでしかできない体験」は高い付加価値となります。都市のホテルでは得られない深い文化的・精神的充足感こそが寺院宿泊の魅力であり、ゲストの心に残る滞在体験が口コミやリピーター獲得にも直結します。「泊まること自体が目的地」となる宿坊ビジネスは、価格競争に陥りにくい独自性あるマーケットと言えるでしょう。

寺院宿泊ビジネスの成功事例

実際に寺院を再生した宿泊施設は着実に成果を上げています。新潟県南魚沼市の民宿ホタルは、築250年の廃寺を一棟貸し宿にリノベーションした先駆的事例です。開業当初、「旅館が次々廃業する地域でなぜ今さら宿を?」という周囲の懐疑的な声もありましたが、蓋を開けてみれば開業直後から予約が殺到。わずか半年で17ヶ国・200人以上の外国人が宿泊するなど国内外からゲストがひっきりなしに訪れ、現在では地域を代表する人気宿となっています。地域に観光資源が少ないと言われた場所でも、「廃寺に泊まる」という体験そのものが観光目的となり得る好例です。

また都市部でも、京都・知恩院の和順会館のように寺院境内に現代的な宿泊施設を備えたケースや、大阪・四天王寺のように境内施設を改装した宿坊などが登場し、いずれも外国人観光客から高評価を得ています。これら成功例に共通するのは、歴史的建造物の魅力を残しつつ快適性を両立させている点と、文化体験コンテンツをしっかり用意している点です。伝統とモダンのバランスを取り、初心者でも気軽に参加できる体験プログラムを提供することで、「敷居が高そう」という先入観を払拭し幅広い層の集客に成功しています。

もちろん、寺院宿泊にはクリアすべき課題もあります。建物が古い場合、消防法の基準を満たすための改修やバリアフリー対応が必要となり得ますし、年間営業日数の制限(民泊の場合は最大180日)との兼ね合いも検討が必要です。しかし旅結株式会社の寺泊コンサルティングでは、自治体や消防との調整、旅館業許可取得支援など法規面も含めトータルでサポートすることで事業化を実現しています。実際、旅結はこれまでに4箇所の寺院で宿泊事業導入を支援した実績があり、各案件で地域文化と収益性を両立させるモデルケースを創出しています。

文化的価値と収益の両立を目指して

寺院宿泊ビジネスは単なる収益追求ではなく、文化財の保全と地域貢献という側面を併せ持つ点で特徴的です。空き寺を観光資源として再生すれば、放置すれば朽ちるはずだった建物が旅行者を迎える拠点によみがえり、地域社会に新たな活力をもたらします。さらに、宿泊者と地域住民・僧侶との交流を通じてその土地の魅力が再発見されたり、伝統文化や地場産業のPRにつながるという好循環も期待できます。自治体によっては寺院民泊を活用した地域振興策やイベント連携を行うところもあり、まさに今求められている取り組みと言えるでしょう。

旅結株式会社は「テラステイ」事業を通じて、こうした文化と収益の両立に挑戦しています。日本各地の提携寺院と協力し、“泊まる”ことをきっかけに心の豊かさを感じられる場を提供する――すなわち**「地域文化体験×不動産投資」**の未来を拓くことが我々のビジョンです。具体的には、座禅や写経、法話といった宗教体験付きの宿泊プラン開発や、地域の伝統行事や周辺観光資源と組み合わせた滞在コンテンツの企画にも取り組んでいます。また訪日客向けには多言語ガイドの手配やインバウンドマーケティングも展開し、海外からの集客も積極的に図っています。これらのノウハウを基に、今後さらに多くの寺院で新しい宿坊モデルを生み出し、国内外の旅行者に忘れられない体験を提供するとともに、日本の伝統文化継承と地域創生に寄与していきたいと考えています。

寺院に泊まる――それは単なる宿泊を超えた価値を持つ体験です。宿坊ビジネスの可能性はまだ広がり始めたばかりですが、文化的意義と経済的成果を両立できるこのモデルは、日本発の魅力的な投資分野として今後ますます注目されるでしょう。旅結株式会社はその最前線で、新しい宿泊の形を提案し続けます。

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